ダルエスサラーム便り


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Kusikia si kuona No.32

相澤俊昭


相澤 俊昭(あいざわ としあき)




セルー動物保護区『Selous Game Reserve』




  今回は個人的にも思い入れのあるタンザニア南部を代表するセルー動物保護区を紹介したいと思う。セルー動物保護区はタンザニア東部に位置し、ルフィジ川流域の広大な地域が保護区に指定されている。面積は50,000㎢程度で、タンザニアの国土の5%程度を占めるといえば、その大きさを分かっていただけるだろうか。サバンナ、林、川、湖など地形の変化に富んでおり、その圧倒的な大自然からは野生の雰囲気がビシバシ伝わってくる。自然環境が豊かで、東アフリカにいる野生動物のほとんどはここで見ることが出来る。私自身、セレンゲティ、ンゴロンゴロなどの北部サーキットを代表する国立公園、保護区に何度か行ったことがあるが、初めてセルーを訪れたときは、その手つかずの大自然と野生動物から伝わってくるピリピリとした緊張感に理由もなく感動したことをよく覚えている。特にルフィジ川の畔から見た夕日はこれまでの人生の中で最高のサンセットだった。セルーはサファリ上級者向けと言われることがあるのが、その通りなのかもしれない。言葉では表現しづらいがセルーは本物のサファリを体験させてくれるところだと個人的には思っている。

<こちらをジッと見ながら警戒しているシマウマ。その場に張り詰めた緊張感が伝わってくる。>


<昼間はダラダラと寝ていることが多い。これも百獣の王のなせる業か。>

 セルー動物保護区の始まりを調べてみるとアフリカで最初に作られた保護区であるということを知った。セルーの設立は1896年になるそうだ。アラブ人の奴隷と象牙の貿易が盛んに行われていた1896年5月7日に当時のドイツ植民地総督が『野生動物条例』というものを公布し、2ヶ所の狩猟保護区を設立したのが始まりだったそうだ。この二ヶ所の内の一つがキリマンジャロ山の西側一帯ともう一つが現在のセルー動物保護区の観光客に開放されているブロックだったそうだ。セルーの始まりはムホロ保護区と呼ばれ、たったの1,500㎢だったそうだ。その後、拡大を続け現在の広さになるのだが、マジマジの乱も、野生動物が徘徊するこの広大な無人地帯を生むことの要因の一つになっている。


<日陰で昼寝中のライオンの親子。>

 ダルエスサラームからセルーへのアクセスは三通りある。まず、陸路で行く方法がだがダルエスサラームからキルワロードを南下し、Kibiti(キビティ)という町で右折すると250kmほどでセルーの玄関口のムテメレ・ゲートに着く。所要時間は5-6時間ほどだろうか。Kibitiから先が悪路になるが、最近はグレーダーがちゃんとかけられ、だいぶ道が良くなった印象を受ける。変わりゆく車窓の景色を見ながら移動するのも面白いと思う。ただし、雨季の4、5月は道が水没するのでお勧めはしない。二つ目はダルエスサラームから軽飛行機(セスナ機)で移動する方法だが、これが最も利用されている一般的な移動方法だろう。ダルエスサラームからのフライトの所要時間は40分程度で、飛び立てば、あっという間にセルーまで辿り着いてしまう。上空から眼下に広がるセルーの広大な原野と大河ルフィジ川を眺めることが出来るのも、この空路ならではの魅力の一つだろう。最後の三つ目はタザラ鉄道を利用する方法である。ダルエスサラーム駅からキサキ駅まで行くのだが、現在、急行と普通列車が火曜と金曜の週2便のペースで運行している。この鉄道を利用して移動する方法がとても面白いと思うのだが、趣味の世界の色が濃く、ツアーを作って販売しても、なかなか成立したことがないのが残念だ。

 セルーのサファリの特徴は、そのアクティビティの種類の豊富さだろうと思う。ゲームドライブはもちろんのこと、ウオーキングサファリ、ナイトサファリ、そして一番の特徴であるルフィジ川沿いと湖で行われるボートサファリがある。それに加え、あまり知られていないがフィッシング(釣り)も出来る。私自身も一度やったことがあるが、結構な大物が釣れ、病みつきになりそうな快感を味わった。セルーのお勧めの時期は8月から10月、そして12月と3月だろうと思う。6月から7月は大雨季明けで、緑も豊かで、草食動物の子どもが多い時事。8月から9月はだんだんと乾季が進み、動物たちが水場に集まって来るので、動物が見やすいサファリに適した時期。リカオンに遭遇しやすいのはこの時期と言われている。そして小雨季が始まる10月上旬までがベストシーズンだと思う。ルフィジ川の土手沿いに水鳥が営巣するのもこの頃だ。


<スワヒリ語で『Mbega』と呼ばれるBlack & White Colobas Monkey。>


<ナイトサファリ中にインパラの群れに出会った。夜でも肉食獣から身を守るために、常に周りを警戒している。>


<ボートサファリ中に突然、カバの集団が現れた。その巨体に似合わず、結構なスピードで動く。>

 だが、残念なことにセルーの豊かな自然に影を落とす出来事が起こっているのも事実だ。かつては、ゾウ、サイが多数生息していたが、近年、激しく行われた密猟によって、1976年には11万頭近くいたゾウが、2013年のセンサスでは1万頭近くまで数を減らしていたというから、その激減ぶりには驚きを隠せない。2015年には『象牙の女王』と呼ばれる大物が捕まって世間を賑わしたが、あれだけ、中国、日本などのアジアの国が象牙で叩かれているのに、ゾウに値段が付けられ、ハンティングが出来る現状にも疑問を感じる。そしてそのほとんどの客は批判する側の欧米やアラブからやってくる。サイにいたってはサンクチュアリを作って、保護活動を行っていたが、セルーでは絶滅寸前の危機に陥っている。今となってはレンジャーでも、糞や足跡の痕跡を見かける機会がめっきり無くなったそうだ。2014年頃にセルーの奥地で親子のサイを見かけたという話もあるが、果たして?また、セルー南部ではウラニウムの埋蔵が確認され、鉱山の開発計画の話もある。このとてつもなく広大なアフリカ最大で最古の保護区が、今後どのように保護・管理されていくのか興味深いところである。


<ハンティングと密猟のせいでセルーのゾウはすごく警戒心が強く、攻撃的だ。>







 

(2017年4月15日)





*『Kusikia si kuona』とは日本語で百聞は一見にしかずという意味です。タンザニアで私が実際に見て、感じたことをこのページで紹介していきたいと思います。

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