エバリエスト・ナンポカ(Evarist NAMPOKA)

漆黒のシェタニを生み出す魔術師





ナンポカのマコンデ彫刻は、すべてシェタニ(精霊)である。どれが手だか足だか身体だか悩み出したら一生解決しなさそうだが、一見勝手に伸びているようなその黒く細い曲線たちは、実はしっくりとつながり合って一体のシェタニを生み出している。目や歯や鼻や角などと思われるものが所々に付いていて、その存在感をふりまいている。気持ち悪いと思う人もいるかもしれないが、その立ち姿は、モダンでシンプルで潔い。

 ナンポカは作家としてはあまり恵まれたほうではなかった。1944年に隣国モザンビークの農家に生まれた。1966年にタンザニアの首都ダルエスサラームに移り住み、生活のためにマコンデ彫刻を始めた。最初は人物を彫っていたが、「人間は神の創りたもうたものだが、シェタニは私自身の想像の産物」ということで、シェタニのみを彫ることにした。そう決めてからはお金にとても困っている時や、お腹の空いている時以外は、次々とアイデアが浮かんできたそうだ。

 1997年12月のスワヒリ語新聞の記事で彼は、「政府は芸術家たちを長い間冷遇してきた」と自分と彫刻の写真入で訴えた。最も困ることは、作品を売る場がないことだ。土産物屋などに下ろしても、代金は売れてからしかもらえない。彼は、JATAツアーズのオフィスにも作品持参でよくやってきた。私たちに余裕がない時でも作品を見るとどれも惹かれるところがあり、ついつい欲しくなってしまうのだった。

 ナンポカは2000年の5月にあっけなく亡くなってしまった。体の調子が悪いと訴えた2、3日後のことだったらしい。赤痢をこじらせたということだった。病院で布でぐるぐる巻きにされた彼の遺体と対面したが、それでも信じられなかった。でも、ナンポカの残したシェタニたちは、さりげなく、でも威厳に満ちて、黒い光を放っている。

息子のマティアス・ナンポカが後を継いでシェタニを作り続けている。 



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