ダルエスサラーム便り


 

タンザニア歳時記・12月
― 断食月にキンゴルウィラ村へ行く・その2―



金山 麻美(かなやまあさみ)



   きれいに並べられたご馳走 グビさんの家に着くと6時半!夜のカーテンがかかり始める断食明けの時間です!まず、ムワリムさんが椰子の実に穴をあけて飲み始めたのを見て、私もココナツジュースをわき目も振らずに一気飲みしてしまいました。いや、実は、その頃には顔見知りになっていた近所の子供(6歳。名前はマンディ)が、もの欲しそうに私のほうを見ていたのには気づき、少し分けてやるべきかどうかという迷いはちょっとあったんだけど、いや、断食してないガキにやる必要はねえという気持ちが強くなり、要するに全部の飲みたかったので、「ああ、うまかった」と飲み干したのでした。ひとごごちつくというのは、こういうときのことをいうのだと実感。我慢という体と心を支えていた芯が一本抜けて、柔らかくなり、そして嬉しい元気がむくむくと沸いてくる感じ。篤史はココナツジュースを3つも立て続けに飲んでました。飲みすぎだ!でも頑張ったね。

 グビさんの家の裏庭に敷かれたゴザの上には、フタリのご馳走が美しく並べられていて、私たちを待ってくれていました。ほんと目に痛いほど輝いて見えます。グビさんの弟ハミシの妻、ママサディキが作ってくれたご馳走です。
 お芋のクリーム煮のようにみえる、ジャガイモとキャッサバとマジンベ(サトイモに似てる。さっき、私も刻むのを手伝った)の柔らか煮込み。とうもろこしとクンデ(ササゲ)の煮物。
しみじみとうまいフタリ

 ポットに入っているのは、砂糖、胡椒入りの薄いウジ。*これがまた優れもので、チャイのような感覚で飲むことができ、ほんのり甘くピリッとした味は、ジンジャエールを何倍もおいしくしたようで、からだにしみじみと優しく染み込んできます。ムワリムさんは3杯もお代わりしてました。お芋の柔らか煮もとろけるおいしさ。飲み込むのがもったいなく、舌の上でころころ転がしたくなります。
 大皿からスプーンでめいめいが取っていく食べ方も同じ釜の飯をわけあってるんだって感じでうれしい。断食した仲間だもんね。今日だけだけど。グビさんは通りかかる人に「カリブフタリ」(寄ってらっしゃいよ)と声をかけます。「アサンテ」(ありがとう)と言って去ってゆくけれど。

 去年は、近所の少年たちが空き缶を太鼓にしながらにぎやかに各家を廻ってご馳走をすこしずつせしめていったという事なのですが、「今年は、見かけないなあ」とグビさん。少年たちは今年は断食をあきらめちゃったのかもね。
 デザートのパイナップルは冷蔵庫もないのに心なしか冷たくて、身体にうれしく染みてゆきます。なんかすっかり満足なんですが、それではいけません。まだこの後にダークがあるというわくわく感。昼間とはちがって、ときおりひんやりとした風がとおりすぎてゆきます。裏庭に出したスツールに座って何をするともなく過ごす夜。まだお楽しみは残っているという思い。時はしみじみと過ぎてゆきます。

 このあと、九時(私たちのために時間を早めてくれたようです)にダークでチキンピラウとカチュンバリ(サラダ)という大ご馳走をいただくのですが、最初に食べたフタリのおいしさにはかないませんでした。
輪をかけたご馳走ダク
 五臓六腑に染み渡るうまさのフタリ。もともとおいしいものではあるんでしょうが、断食をしたからこそ味わえるこの深さ。断食中のフタリがいつもこんなにおいしくいただけるとしたら、断食するのはすごく素敵なことなのかもしれないと思えてきました。あたりまえのことなんだろうけど、おいしいご飯をいただくためには、空腹を我慢することが必要なんですね。食べたいときに冷蔵庫に入れたチョコレートをつまみ、コーヒー、紅茶をがぶ飲みしていた自分を反省しました。

 次の日も夜明けからお昼まで飲食をしませんでした。家に戻ってお昼のデザートのためにマンゴを切りつつちょっとつまみ食いをしたのですが、その日初めての食べ物を口に入れる快感!つるんとした感触が口の中にうれしくて、噛むのがもったいなくて、ちょっとドキドキしたりも。

 我慢するのは、悪いことじゃないんだなということと、断食するのは、ちょっとしんどいけれど、その何倍もの素敵なことがあるんだと思えたのは大きな収穫でした。といっても軟弱な私はその後は断食していないんだけど。でも、チョコレート断ちは今のところできてます!

 いよいよ明日、12月6日は断食明けの祝日Idd el Fitrです。


*ウジはいうなれば、お粥のようなものです。ポピュラーなのがとうもろこしの粉を飲める程度にお湯で薄く溶いて煮込み、砂糖などを加えて飲みやすくしたもの。レモン汁やバターなどを加えることも。離乳食、病人食、朝食としてよく用いられます。最近はインスタントのウジパウダーも売ってます。

 

(2002年12月5日)


その1へ


バックナンバー

トップページへ戻る