ダルエスサラーム便り

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タンザニアからの手紙 No.29

大雨季サファリ その2



金山 麻美(かなやまあさみ)



  シマウマの群れ  2)命を紡ぐ大移動

 なんといってもこの時期、圧巻なのはセレンゲティとンゴロンゴロの境界付近でヌーの大群の大移動(Migration)、それも子連れが見られることだ。
 ンゴロンゴロからセレンゲティのゲートへと向かう道すがら、両脇に広がる草原の行く手に黒い影がいくつも見え始めた。いよいよヌーの大群の中に入っていくのか、と思ったら近づいてみると、シマウマの群れだった。ざっと見渡しても200頭以上はいるだろう。親子連れもいるが、子どもはもうだいぶ大きくなっているようだ。もう少しでお母さんに追いつきそうな体。地平線まで広がる草原に散らばってのんびりと草を食んでいる。

 ヌーだけでなく、シマウマやガゼルなどのレイヨウ類も草を求めて移動するのだ。8月から11月にかけての乾季の間、彼らはケニア側のマサイマラに草を求めて行き、小雨季の始まる11月の終わりころ、セレンゲティに戻ってくる。そしてたっぷり草を食んだ1月の終わりから2月にかけて子どもを産む。3月に始まる大雨季が子育てのための食料をたんまりと育んでくれるというわけだ。

180度ヌーの群れ  セレンゲティ国立公園への入り口、ナアビゲートの小高い丘から平原に広がるごまめの粒のようなヌー(こんどこそ!)の大群が見えた。2000頭以上いるだろうか。これからあの群れの中に入っていくのだ。

 ヌーの群れが地平線を埋め尽くす。360度とはいかなくとも、180度ヌーの群れというのは、何度も見た。ヌーの大群は全部で100万頭以上、いるらしい。いけどもいけどもヌーだ。と思うと、シマウマたちが混在していることもあった。ある群れを通り過ぎて、しばらく行くと1000頭以上はいる別の群れが現れてくる。ゆったりと草を食んでいる群れもある。青々とした草原でのんびりとすごしているヌーの母子連れを見ていると幸せな気分になってくる。走って移動している一群もいた。ヌーの子どももお母さんにおいていかれまいと一生懸命だ。道路のすぐ近くに群れがいるときには、生暖かいヌーたちの匂いと「ンヌー、ンヌー」という名前の由来と ヌーの群れを見つめるハイエナ なった鳴き声に囲まれてしまう。
 ヌーの子どもたちは概してシマウマの子どもたちよりも幼いようだった。出産時期がシマウマより遅いのだろうか。

 そういった群れを狙う肉食獣たちもたくさん見た。草丈が高いので、隠れる場所には困らない。ハイエナ、ジャッカル、ライオン、チーター‥。彼らが近くにいても草食動物たちは結構平気でむしゃむしゃ草を食んでいた。しかし、ハイエナといえど、動き出すとヌーたちも少しずつ遠くへ移動する。一度、群れから離れたヌーが一頭だけハイエナのそばを通りかかったので、ちょっとハラハラしたが、ハイエナくんは何の行動も起こさないままだった。ハイエナ一匹では歯がたたないのだろうか。

 長い距離を草を求めて移動するヌーの群れ。移動の途中で力尽きる仲間も数多くいることだろう。川も渡れば、肉食獣もいる。道中で怪我したり、はぐれたりすることもあるだろう。ヌーの子どもは生まれてから半年以内にその40パーセントが命を落とすそうだ。
 ヌーたちは何を考えているのだろうと考えてみた。考えてもわからない。けれど確かなことは、彼らがここにいること。生きるために、生き延びるために、ただそれだけのためにいるのだということ。




ただ生きる、そんなシンプルで美しいことが、人間にはできなくなってきているのだなと悲しくなった。  大雨季のセレンゲティで考えたことである。

 3)おまけ:秘密にしたいけど、セレンゲティにもサイがいた!

 ンゴロンゴロクレーターの中では雨上がりのかげろうの中に揺れるクロサイの親子連れを見た。遠目ではあったが。絶滅危惧種のクロサイにもンゴロンゴロクレーターの中だったらほぼ確実に会える。寄り添う親子連れはほのぼのして見えた。

 20世紀初頭にはタンザニアだけでなく、全体の生息数が100万の単位でいたそうだが、1984年までには9,000頭以下となり、現在は2,500頭くらいしか残っていないそうだ。*人間が増え、彼らの居場所が狭められてきたということもあるが、ここまで減った大きな理由は角を狙った密猟であったことはよく知られている。

 それが今回、セレンゲティでも母子連れのクロサイに巡り合うことができたのだ。クロサイに会うポイントの少し前にわたしたちの車に公園の職員の車が道なき道を突っ切って近づいてきた。「なんとかという車を見なかったか?」などと訊いてきたが、わたしたちのあずかり知ることではなく‥。職員と別れてしばらくしたら、はっきりと見える近さにクロサイの母子連れがいた。のんびりと座っているようだったが、近くにはジャッカルが2匹いた。このジャッカルが無謀にも?サイの子どもを狙って近づいていったのだ。サイのお母さんはすくっと立ち上がり、角を振ってジャッカルを追い払った。ヒュー、カッコウいい!

 主にセレンゲティやンゴロンゴロでガイド兼運転手をやっている今回同行したA氏は「セレンゲティでサイを見たのは、10年で3回目だ」と言っていたので、かなりラッキーなことなのだ。セレンゲティにもサイがいると分かって、とてもうれしい。
 職員は、きっとサイのいる方向へ行くわたしたちが怪しい者でないかどうか偵察に来たのだろう。
 セレンゲティでもサイの数が増えていきますよう。キリンのように首を長くして期待していよう。

*Field guide to the larger mammals of Africa より

                          (2008年5月1日)


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